西興部村

西興部村(にしおこっぺむら)に関する包括的レポート

歴史

西興部村は、もともと隣接する興部町(旧・興部村)の一部であったが、大正14年(1925年)1月1日に興部村から分村し、西興部村が誕生した。分村当時の人口は約4,453人(戸数858戸)で、林業や農業の振興により地域の経済力が高まったことが独立の背景にある。平成以降も地域振興が図られ、平成2年には村営の「鹿牧場」が開設され、エゾシカの飼養や有効活用が始まった。平成9年には森の美術館「木夢(こむ)」が開館し、木工芸術や村の文化発信の拠点となっている。さらに平成11年には「美しい村づくり条例」を制定し、公共施設や民家の外壁を統一のオレンジ色系統に塗装する景観形成を推進している。統一感ある景観が村の魅力として評価され、“夢をおこす村”として特色ある発展を遂げてきた。

地理的特徴

西興部村は北海道北東部、オホーツク総合振興局管内の西北端に位置する。オホーツク海沿岸から直線で約25km内陸にあり、東と北に興部町、南に滝上町、西に下川町が隣接する。総面積は308.08平方キロメートルで、村域の約9割は森林に覆われている。地形は丘陵性山地で、平均標高400mほど。気候は冷涼で、年間平均気温は約5.8℃、年間降水量は約920mm。冬は積雪が1メートルを超え、最低気温は-20℃前後になることもあるが、夏は30℃近くまで上がることもある。村名の「興部」はアイヌ語の「オウコッペ(川尻が合流する所)」に由来し、西方に位置することから「西興部村」となった。都市的施設は少ないが、満天の星空と四季折々の自然、静寂が魅力である。

観光スポット・名所

村内には「行者の滝」「赤岩の滝」「黒岩の滝」などの自然景観が点在し、遊歩道を通じてハイキングも楽しめる。ウエンシリ岳では夏に天然の氷のトンネルが出現し、一般公開されている。文化施設としては森の美術館「木夢」や郷土資料館「創夢館」、エゾシカを放牧する鹿牧場、鉄道資料館などがある。道の駅「にしおこっぺ花夢」には大型のからくりオルガンがあり、「森のオーケストラ」ショーは子どもに人気。村営ホテルや森林公園キャンプ場、日本最北のバッティングセンターなどもある。

年間行事には「むら興しまつり」や「行者の滝祭り」があり、木工体験教室なども盛んである。

住民・人口統計

2025年5月末現在の人口は939人(男性478人、女性461人)、世帯数は631戸。過去には人口5,000人規模であったが、過疎化により1,000人を下回っている。高齢化率が高く、生産年齢人口が少ない。外国籍住民も一定数存在する。単身世帯や高齢世帯が多く、地域の見守り体制が重要である。

教育・福祉

教育面では西興部小学校・中学校が各1校、保育所(つくし保育所)が1園ある。高校進学者にはバス通学費補助がある。子育て支援として、医療費や給食費の無償化、出産祝い金、紙おむつクーポン、木製玩具の贈呈など多様な支援制度が整っている。

医療機関としては西興部厚生診療所と歯科診療所があり、地域包括支援センターでは見守りセンサーや緊急通報装置の配布を行っている。特別養護老人ホーム「にしおこっぺ興楽園」、ケアハウス「せせらぎ」、障がい者施設「清流の里」なども整備されている。

経済・産業

主な産業は酪農と林業。酪農は大規模経営が中心で、生乳は高品質な放牧牛乳としてブランド化されている。林業では村内産木材を使用したエレキギター製造が特色で、オホーツク楽器工業が国内ギター製造の約4分の1を担う。

エゾシカ肉を使った加工品やマツタケ焼酎などの特産品もある。起業家支援制度として最大300万円の補助があり、新規事業や地域にないサービスの創出を後押ししている。バイオガスプラントの導入も進み、持続可能な資源循環を目指している。

移住・定住支援

空き家バンク制度を活用し、空き家情報を発信。住宅新築には定額200万円、移住者加算や子育て世帯加算により最大400万円程度の補助が受けられる。体験農園コテージを活用したお試し移住も可能で、1か月4万円と安価に長期滞在できる。

酪農研修制度や農業支援、起業補助などにより、就農・起業希望者の支援体制も整っている。地域おこし協力隊制度も導入されており、観光・農業支援などで活動中。災害が少なく(地震・台風被害がほとんどない)、安全で自然豊かな生活環境も魅力。光回線も整備され、テレワークも可能な地域である。

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